金属3Dプリンターの価格相場【方式・クラス別】
金属3Dプリンターの本体価格は、最も安価な金属フィラメント方式で約10万円台から、産業用ハイエンド機では1億円を超えるものまで幅があります。価格差の主な要因は「造形方式」と「造形サイズ・精度・生産性」です。まずは方式・クラス別の価格帯を把握しましょう。
エントリークラス(金属フィラメント方式)
エントリークラスの金属3Dプリンターは、約10万円台〜数十万円台で購入できます。これは熱可塑性樹脂に金属粉末を混ぜたフィラメントを使う方式(金属FFF/熱溶解積層系)で、装置本体は樹脂用3Dプリンターに近い構造のため安価です。
ただし注意点があります。この方式では造形しただけでは金属部品として使えず、造形後に樹脂を取り除く「脱脂」と、金属を結合させる「焼結」の工程が必須です。脱脂・焼結を行う専用炉を自社で用意する場合、炉を含めた実質的な導入費用は数百万円規模になることもあります。炉を持たない場合は後処理を外部委託することになり、別途費用が発生します。
ミドルクラス(バインダージェット方式など)
ミドルクラスは、数百万円〜2,000万円程度が目安です。金属FFFの上位機や、金属粉末に結合剤を吹き付けて成形するバインダージェット方式などがこのクラスに含まれます。
たとえば金属FFF方式の代表機は1,500万〜2,000万円程度、ランニングコストを従来機より大幅に抑えた製品も登場しています。バインダージェット方式はサポート材が不要で比較的多くの数量を効率よく生産しやすい一方、焼結による収縮管理が必要です。
産業用ハイエンド(パウダーベッド方式・DED方式)
産業用ハイエンドの金属3Dプリンターは、数千万円〜1億円超が相場です。金属粉末にレーザーや電子ビームを照射して溶融・積層するパウダーベッド方式(PBF)が代表で、高精度・高密度な造形が可能なため、航空宇宙・医療・自動車試作などの分野で採用されています。
ノズルから金属粉末やワイヤーを供給しながら溶融・肉盛りする指向性エネルギー堆積法(DED)も産業用クラスに位置づけられ、大型部品の造形や既存部品の補修に向いています。
産業用クラスの具体的な機種としては、3D Systems社製のDMPシリーズが代表的です。中型・量産対応のDMP Flex 350、DMP Factory 350や、500×500×500mmの大型造形と3基のレーザーによる高い生産性を備えたDMP Factory 500などがあります。メーカーや機種によって造形サイズ・レーザー数・対応材料が異なり、価格もそれに応じて変わるため、導入を検討する際は用途に合った機種の見積りを取ることが重要です。
| 方式・クラス | 本体価格の目安 | 特徴 |
|---|---|---|
| 金属フィラメント方式(エントリー) | 約10万円台〜数十万円 | 安価だが脱脂・焼結の後処理が別途必要 |
| バインダージェット方式など(ミドル) | 数百万〜2,000万円程度 | サポート材不要、数量生産に対応しやすい |
| 金属FFF上位機(ミドル) | 1,500万〜2,000万円程度 | ランニングコストを抑えた製品もある |
| パウダーベッド方式:レーザー/電子ビーム(産業用) | 数千万〜1億円超 | 高精度・高密度、航空宇宙・医療・試作向け |
| 指向性エネルギー堆積法(DED、産業用) | 数千万円〜 | 大型部品・補修向け |
※価格は造形サイズ・レーザー数・オプションによって大きく変動します。具体的な金額は各メーカー・販売代理店の最新見積りをご確認ください。
金属3Dプリンターの造形方式ごとの仕組みやメリット・デメリットは、姉妹記事「金属3Dプリンターとは ~基礎知識やメリット・デメリットを解説~」で詳しく解説しています。
本体以外にかかる導入費用
金属3Dプリンターの導入費用は、本体価格だけでは決まりません。設置環境の整備、後処理設備、材料の初期購入など、本体以外の費用(付帯コスト)を合わせて見積もることが重要です。
設置環境(恒温室・空調・不活性ガス)
金属3Dプリンターは温度・湿度の変化に敏感なため、安定した設置環境が必要です。恒温室の構築や空調設備の整備には、数百万円規模の費用がかかることがあります。
また、パウダーベッド方式などでは酸化を防ぐために不活性ガス(アルゴン・窒素)を使用します。金属粉末は微細で発火・粉塵爆発のリスクがあるため、粉末の取り扱い・保管設備や防塵・防爆対策も必要です。
後処理・二次加工の設備/委託費
金属3Dプリンターは、造形後の後処理を前提に費用を考える必要があります。造形物はそのままでは使えないケースが多く、方式に応じて次のような後処理が必要です。
- サポート材・ベースプレートからの切り離し
- 脱脂・焼結(金属フィラメント方式・バインダージェット方式)
- 熱処理・HIP処理(応力除去・高密度化)
- 表面仕上げ・機械加工(精度・面粗さの要求に応じて)
これらを自社で行うには専用設備が必要で、外部委託する場合も費用が発生します。たとえば後処理の委託費用は、内容によって1kgあたり数万円程度が目安となる場合もあります。
材料費(金属粉末・フィラメント)
材料となる金属粉末・金属フィラメントは、樹脂材料に比べて高価です。チタン合金やインコネル(ニッケル合金)などの高機能材料は、ステンレスやアルミ合金よりもさらに材料単価が高くなる傾向があります。導入時にはある程度の材料をまとめて購入するため、初期費用の一部として見込んでおく必要があります。
金属材料の種類や特徴は、SOLIZE PARTNERSの対応材料一覧もあわせてご確認ください。
記載の材料以外にも対応可能な材料があります。お気軽にお問い合わせください。
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導入後のランニングコスト
金属3Dプリンターは、導入後にも継続的なランニングコストがかかります。主なランニングコストは次のとおりです。
- 材料費(金属粉末・フィラメントの補充)
- 保守・メンテナンス費(定期点検、消耗品・フィルター交換)
- 電力費(高出力レーザー・加熱を使うため電力消費が大きい)
- 不活性ガスなどの消耗品費
- 造形・後処理を担う人件費(専門知識・技能が必要)
金属3Dプリンターは高度な技術と技能を必要とする装置です。CADによるデータ準備、造形方向やサポート設計の最適化、後処理の管理など、運用には熟練した人材が欠かせません。人材の確保・育成にかかるコストも、実質的なランニングコストとして考慮しておきましょう。
総額(TCO)で考える|本体価格だけで判断しない
金属3Dプリンターの導入是非は、本体価格ではなく総額(TCO:総所有コスト)で判断することが重要です。TCOは「本体価格+付帯設備費+材料費+ランニングコスト+人件費」の合計で考えます。
たとえば本体が安価なエントリー機でも、脱脂・焼結炉や後処理設備、運用人材まで含めると、想定より大きな投資になることがあります。逆に高額な産業用機でも、稼働率が高く内製化のメリットが大きければ投資回収が見込めるケースもあります。まずは「何を・どれだけ・どのくらいの頻度で作るのか」を明確にし、そのうえでTCOを試算することが失敗しない導入の第一歩です。
導入前に、まずは金属部品を1点だけ造形して費用感や仕上がりを確かめたい場合は、受託造形サービスの活用が近道です。金属3Dプリントの造形費用は形状・材料によって変わるため、SOLIZE PARTNERSでは仕様をお伺いして個別にお見積りします。→ お問い合わせはこちら
導入費用を抑える方法(補助金・リース)
金属3Dプリンターの高額な導入費用は、補助金やリースを活用することで負担を抑えられる場合があります。代表的な方法は「補助金制度の活用」と「オペレーティングリース」の2つです。
活用できる補助金制度
中小企業が金属3Dプリンターを導入する際は、設備投資を支援する補助金制度を活用できる場合があります。代表的な制度は次のとおりです。
- ものづくり補助金(ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金):生産性向上に資する設備投資を支援する制度。3Dプリンター導入で採択された事例も多くあります。
- 中小企業省力化投資補助金:カタログに登録された機器を対象とする制度。登録機種は随時更新されます。
- 中小企業新事業進出補助金:新市場・新事業への進出を支援する制度。受託造形サービスの立ち上げなどに活用できる場合があります。
なお、これらの補助金は公募回・要件・補助率・スケジュールが年度ごとに変わります。2026年度以降は制度の統合・再編も進められているため、申請を検討する際は必ず各制度の公式サイトで最新の公募要領をご確認ください。
オペレーティングリース
初期投資を抑えたい場合は、オペレーティングリースという選択肢もあります。リースを利用すると、購入時のような多額の初期費用をかけずに装置を導入でき、会計上は経費処理ができるため、高性能な装置を導入しやすくなるという特長があります。
「導入」と「外注(受託造形サービス)」どちらが得か
金属3Dプリンターは、必ずしも自社導入が最適とは限りません。試作段階や発注数量が少ない段階では、初期投資が不要な「外注(受託造形サービス)」のほうがコストを抑えられるケースが多くあります。
判断の目安は「利用頻度・数量」です。継続的に大量の金属部品を製作する見込みがあり、稼働率を高く保てるなら自社導入で投資回収が見込めます。一方、必要なときに必要な数だけ作りたい、まずは金属造形の効果を試したいという段階では、数千万〜1億円超の設備投資をせずに部品単位で利用できる受託造形サービスが現実的です。
金属3Dプリントの受託造形サービスの費用相場や依頼先の選び方は、姉妹記事「金属3Dプリントの受託サービスとは?費用相場と選び方を解説」で詳しく解説しています。導入と外注のどちらにするか迷っている方は、あわせてご確認ください。
よくある質問
金属3Dプリンターの価格はいくらからですか?
最も安価な金属フィラメント方式のエントリー機で、約10万円台から購入できます。ただし造形後に脱脂・焼結の後処理が必要で、専用炉や後処理委託の費用が別途かかる点に注意が必要です。
一番安い金属3Dプリンターはどの方式ですか?
金属フィラメント方式(金属FFF・熱溶解積層系)が最も安価です。装置本体は樹脂用3Dプリンターに近い構造のため、数十万円台から入手できます。一方で後処理が必要なため、実質的な導入費用は本体価格だけでは判断できません。
個人・家庭用でも金属3Dプリンターは買えますか?
一部のエントリー機は個人でも購入可能な価格帯ですが、脱脂・焼結炉や安全対策、材料の取り扱いなどのハードルがあり、実用にはハードルが高いのが実情です。少量・単発で金属部品が必要な場合は、受託造形サービスの利用が現実的です。
本体価格以外にどんな費用がかかりますか?
設置環境(恒温室・空調・不活性ガス)、後処理・二次加工の設備または委託費、金属粉末・フィラメントの材料費、保守・電力・人件費などのランニングコストがかかります。これらを合計したTCO(総所有コスト)で判断することが重要です。
導入と外注(受託造形サービス)はどちらが安いですか?
利用頻度と数量によります。少量・試作段階では初期投資が不要な外注のほうが安く済むケースが多く、継続的に大量生産する場合は自社導入で投資回収が見込めます。まずは外注で費用感を把握してから導入を検討する流れが一般的です。
「導入すべきか、外注すべきか分からない」という段階でも問題ありません。お客様の生産内容や数量をお伺いしながら最適な方法をご提案しますので、ぜひお気軽にご相談ください。
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まとめ
金属3Dプリンターの価格は、エントリークラスの約10万円台から産業用ハイエンドの1億円超まで、方式・クラスによって大きく異なります。導入を検討する際は本体価格だけでなく、恒温室などの設置環境、後処理設備、材料費、ランニングコスト、人件費まで含めたTCO(総所有コスト)で判断することが重要です。高額な導入費用は補助金やリースで抑えられる場合もありますが、試作や小ロットの段階では、初期投資が不要な受託造形サービス(外注)でコストを検証してから導入を判断するのが現実的です。
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