モックアップは英語で「模型」を意味する言葉で、製品開発中のデザイン確認や、店頭・展示会・イベントなどで使用する、本物の製品に類似させた模型です。
製造業の開発現場では、試作時にモックアップを活用するケースが多くあります。製造業以外でもモックアップを活用して、製品化を検討する業界や企業は少なくありません。3Dプリンターの精度が上がり、広く普及したことで、モックアップを3Dプリントするケースも増えています。本コラムでは、モックアップを3Dプリントする手順と、そのメリットについて解説します。
筆者情報
- SOLIZEオンライン3Dプリント お役立ち情報編集部
- SOLIZEの3Dプリンター事業に従事する社員が、3Dプリンターの基礎知識や活用方法、活用例など、3Dプリンターに関する情報を発信します。
・Twitter ・facebook
1. モックアップとは
最初に、モックアップについて解説します。プロトタイプとの違いを整理しておきましょう。
1-1. モックアップの意味
製品開発におけるモックアップは、製品企画段階でコンセプトを具現化した模型のため、製品の機能などの確認には用いられません。
どのような製品でも、会議で決まったコンセプトやイメージだけでは形を決定することができず、モックアップを見て、触って、デザイン性や外観を確認し、イメージをさらに膨らませます。持ち運びできない建物や大型の装置、設備などでも、スケールダウンしたモックアップを用いてイメージを共有することが可能です。また、製品によっては製造要件検討にモックアップを活用することもあります。
1-2. モックアップとプロトタイプの違い
プロトタイプは、試作品です。モックアップとの違いは、機能性を持ち合わせている点です。そのため、デザイン性や外観の確認だけではなく、製品の機能確認・検証を行うことができます。プロトタイプを用いることで、開発の早い段階で製品要件を満足させることや、データだけではわからない製品不具合をつぶし込むことが可能になります。
プロトタイプは製品の機能を付ける必要があるため、モックアップに比べて製作時間やコストがかかります。デザインなどが決定していない段階で、時間やコストがかかるプロトタイプを製作するのは開発上非効率といえるでしょう。そのため、まずは用途に合わせたモックアップにてデザインなどを確定し、続いてプロトタイプ製作へと移行するのが製品開発の一般的な流れです。
2. モックアップの必要性や重要性
デザインやサイズの確認をおもな目的とするモックアップには、いくつかの重要な役割があります。ここではモックアップの必要性や重要性を解説します。
2-1. 見た目を細かくチェックできる
モックアップの最大の目的は、製品デザインなどの完成イメージを正確に伝えられ、相互で理解することや見た目を細かくチェックできる点です。特に、消費者が手にとって使用する製品や身体に装着する製品の場合、デザイン性だけではなく安全性もおろそかにできません。モックアップの活用により、安全性に問題がある場合などにも早期発見や改善につなげやすくなります。
モックアップは、実際のサイズ感や触り心地などを体感できることがメリットです。データでもある程度のデザインや形状の確認はできるでしょう。しかしデータは、拡大縮小が自由にできるため実際のサイズ感を把握することが難しく、触り心地を確認できないなどのデメリットがあります。消費者が手にとって使用する製品の場合、サイズ感や触り心地は大変重要です。データやイメージよりも意外と大きかったり小さかったり、触り心地が悪かったりするケースなど珍しくはありません。モックアップは、実物とデータ・イメージとのギャップを埋める重要な役割を担います。
2-2. チーム内で意識を統一できる
部署やチームといった組織内での意識統一のためにも、モックアップの存在は大変重要です。資料や簡単な図のみでは、メンバー間で認識齟齬が生じる恐れがあります。認識齟齬を解消できないまま製品開発を進めてしまうと、プロトタイプを製作した際に想定外の手戻りなどが発生するリスクも否定できません。そのギャップがデザインやサイズ感などによるものであれば、最初から製品コンセプトを作り直す必要性も生じます。そうした事態を避けるためにも、モックアップは重要な役割を担います。
社内プレゼンにモックアップが使用されるケースも少なくありません。言葉や文字、画像でデザインやイメージを説明するよりも、モックアップを見て、触ってもらうことで製品の意図や雰囲気が伝わりやすくなり、最終製品のイメージをより理解してもらえて、広く共有できることは大きなメリットです。プレゼンの成功や社内での了承獲得にもつながりやすくなるでしょう。
2-3. 現場のテストに使用できる
モックアップによっては、現場のテストに使用可能です。開発中の製品が機械的なものでなければ、デザインやサイズの確認を目的としたモックアップであっても最終製品に近い仕上がりとなる場合があります。耐久性など安全面でのリスクが特にないと判断できた場合は、現場で使用したうえで検証結果が得られます。製品の特性によっては、ユーザビリティテストを実施し、ユーザーに使用してもらって意見を集めることも難しくありません。現場でテストするためにモックアップを製作する場合は、耐久性だけではなく材質も重要です。柔らかさや手触り、製品によっては色合いなども考慮する必要があります。また、製品の組み立て性を確認する場合は、割れにくい材質を選ぶことも重要です。
2-4. 展示会や商談などで実際の製品がなくとも商品価値をリアルに訴求できる
製品の完成前はもちろん、最終製品であっても高価なものや、大型の機械・装置など持ち運びが容易でないものでも、モックアップが営業活動に役立ちます。最終製品の大きさや外観、作業性などモックアップで確認できるからです。
展示会などで展示されている多くのサンプルは、モックアップです。モックアップを用いて、カタログなどでは伝わらない製品の魅力をお客さまに伝えることができます。
またモックアップでは、強調したいパーツ・見せたい製品内部の部品を目立たせるため、実製品では難しいカットモデルの製作や部品の色わけなどが可能です。
3. 3Dプリンターでモックアップを製作するメリット
モックアップ製作には、3Dプリンターを活用するとよいでしょう。ここでは、3Dプリンターでモックアップを製作するメリットを紹介します。
3-1. 開発時の手戻りをなくし、開発スピードを短縮
モックアップ製作に3Dプリンターを活用すると、ほかの方法よりも早くでき、開発スピードの短縮につながるでしょう。製品の3Dデータがあれば、複雑な形状であっても3Dプリンターで比較的容易に製作することが可能です。3Dプリンターを活用すると、3Dデータから直接モックアップを製作できるため、従来のモックアップ製作で必要だった手作業や工場などでの作業を省けることは大きなメリットです。
モックアップ製作の手間や時間を省くことで、プロトタイプ製作など次の開発段階への時間も短縮でき、従来よりも短い期間で製品化を目指せるでしょう。消費者ニーズの変化が激しい時代を生き残るには、開発スピードが大変重要です。業界に関わらず、3Dプリンターを活用してモックアップを製作すると開発スピードが短縮できることは大きなメリットです。
3-2. 開発にかかるコストを削減できる
3Dプリンターによるモックアップ製作は、コストの削減にも寄与します。従来の切削加工や注型品などと比較し、種類や大きさにもよりますが、1つにつき数万円から数十万円程度抑えられるケースも珍しくありません。
また、モックアップの使用目的によって材料費を抑えられます。3Dプリンターでは、さまざまな材料を用いてモックアップを製作できます。デザインやサイズを確認するだけが目的であれば安価な材料を用いるなど、目的に合わせて材料を選定することで材料費を抑えることが可能です。モックアップ製作に費やすコストを削減することで、製品開発全体のコスト削減につながります。
3-3. さまざまな材料で製作できる
3Dプリンターによるモックアップ製作で使用できる材料には、樹脂のほか、石膏や金属などがあります。樹脂の種類はさまざまで、硬いものや柔らかいもの、熱に強いものや衝撃に強いものなどがあります。データなどでは感じられない触り心地や重さなどを確認するため、最終製品と同じ、もしくはそれに近い材料でモックアップを製作することができます。それらを確認したうえで、最終製品の材料を決め直すことも可能です。3Dプリンターでは、同じデータから材料違いでモックアップを製作することができ、同じ製品の材料違いを容易に比較できることは大きなメリットです。
質感だけではなく色合いも確認したい場合は、フルカラー3Dプリンターの活用や、研磨・塗装を行うことで、本物の色合いに似せたモックアップ製作が可能です。デザイン性が求められる製品の場合、配色なども無視できません。3Dプリンターの活用により最終製品のモックアップを容易に製作できることは大きなメリットです。
3-4. 作り直しもしやすい
製作したモックアップに問題や修正箇所、新たなアイデアやイメージの追加などがあれば、3Dデータを修正するだけで新たなモックアップの製作が可能です。従来のモックアップ製作方法では、修正や変更のたびに多くの時間やコストがかかることがあります。時間やコストを気にして最初からパーフェクトな製品を目指す必要がなくなるため、イノベーションが生まれやすくなるでしょう。
最終製品製作に型を用いる場合でも、モックアップ製作は3Dプリンターで十分です。特に、新製品の開発には何度も改良が必要となります。3Dプリンターを活用すれば、時間やコストを削減しつつ、品質の高い製品の開発ができるでしょう。
4. 3Dプリンターでモックアップを製作する流れ
3Dプリンターでモックアップを製作する場合、まずは3Dデータが必要です。自社で3Dプリンターを保有している場合、3Dデータを自社の3Dプリンターに送信し、自社で製作する流れになるでしょう。自社で3Dプリンターを保有していない場合、3Dプリントサービスを行っている会社へデータを送り、見積りから発注を行い、製作する流れになるでしょう。
展示用など、製品PRに使うモックアップの場合、細かい仕様のすり合わせが必要となるため、3Dプリントサービス担当者との打ち合わせから始まります。打ち合わせでは、用途や素材、サイズなどを決定します。打ち合わせで決定した内容から、モックアップのデザインをつめていき、デザイン決定後、3Dプリンターで製作をします。しかし、場合によっては製品用データをそのまま3Dプリンターで使用できないこともあり、その場合、3Dデータのモデリングから着手することとなります。
モックアップの用途や目的によりますが、必要であれば塗装やレーザーマーキングなどの表面処理を行います。より最終製品に近いモックアップを望む場合、これらの処理を丁寧に行わなければなりません。また、いくつかの部品にわかれている場合、それら部品の組み立てを行います。組み立て後は、組み立て状態に異常がないかチェックをしましょう。
5. 大型モックアップは3Dプリンターで製作できるのか
3Dプリンターの進化にともない、大型のモックアップ製作が可能となりつつあります。従来、品質があまりよくないケースが多く、費用対効果が低いことから、大型のモックアップ製作には3Dプリンターは適さないといわれてきましたが、近年では光造形方式や熱溶解積層方式などで大型の3Dプリンターが続々と誕生し、特に光造形では大型でも精度のよいものや反りが少ないもの、熱溶解方式では造形後に機械加工を入れられるマシニング機能を持ったものなど、用途に応じた大型造形機が増えています。そのため、家電や自動車メーカーなど多くの産業で、3Dプリンターを活用して大型のモックアップを製作する企業が増えています。
6. モックアップ製作に3Dプリントサービスを利用するならSOLIZEオンライン3Dプリント
モックアップ製作に3Dプリントサービスを利用する場合は、「
SOLIZEオンライン3Dプリント」を選択するのが得策です。ここでは、「SOLIZEオンライン3Dプリント」を利用するメリットを紹介します。
6-1. 見積りから発注までオンラインで完結できる
「
SOLIZEオンライン3Dプリント」は、3Dデータをアップロードするだけで、すぐに見積りや製造性の確認が可能です。自動3Dデータ評価システムでは、材料ごとに形状再現性の評価ができます。造形懸念箇所を3D表示し、問題箇所が色付けされるので、3Dプリントの知識がない人でもわかりやすいでしょう。また、造形再現率も数値化されるため、失敗も防ぎやすいでしょう。オンラインで発注まで完結でき、手続きがスムーズである点もメリットです。
6-2. 多数の材料に対応している
「
SOLIZEオンライン3Dプリント」は、幅広い材料でのモックアップ製作が可能です。高強度・高靭性のPA12やPA12GB、柔軟性のあるPPなど、12種類あります。用途に応じて選択可能ですが、材料により価格や納期が異なるため、事前の確認が必要です。造形方式も光造形や粉末造形、インクジェットUV硬化など5種類が用意されており、選択された材料に応じていずれかの造形方式で製作されます。これら幅広い材料と造形方式から最適なものを選択することにより、用途や目的に合ったモックアップが製作できるでしょう。
6-3. 3Dプリントに関する専門的知識・経験・実績が豊富
SOLIZEは、日本ではじめて3Dプリンターを導入し、1990年から3Dプリントサービスを提供しています。3Dプリンターの保有台数は40台以上で、日本最大級です。モックアップだけではなく、プロトタイプ向けや最終製品などでもさまざまな製作実績があります。初めて3Dプリントサービスの利用を検討されている企業は、安心してモックアップ製作を依頼できるでしょう。また、完成品同等の展示用モックアップの製作実績も多くあります。本物さながらのモックアップや、製品説明用のカットモデル、展示用・説明用のモックアップ製作などもSOLIZEに相談ください。
3Dプリントでのモックアップ製作には、コストの削減や開発期間の短縮、作り直しのしやすさなどさまざまなメリットがあります。3Dプリントサービスを利用してモックアップを製作するのであれば、専門知識や経験・実績の豊富な「
SOLIZEオンライン3Dプリント」をぜひ検討ください。見積りから発注までオンラインで完結でき、さまざまな材料や造形方式に対応しています。開発初期段階で、品質の高いモックアップが作れるでしょう。
筆者情報
- SOLIZEオンライン3Dプリント お役立ち情報編集部
- SOLIZEの3Dプリンター事業に従事する社員が、3Dプリンターの基礎知識や活用方法、活用例など、3Dプリンターに関する情報を発信します。